標準管理規約の改正( 案) 消防・防災関係の条項が追加されました
1⃣今年5月にマンション管理関係の法律が一括改正されたことを受けて、標準管理規約(以下「標準規約」という。)も大幅に改正されました。その内容はマンションサポートちよだ第61号(令和7年10月31日発行)で紹介しますが、本紙は法改正とは別に「標準規約」に新たに加えられた消防・防災関係の条項について説明します。
2⃣これまで「標準規約」に「防災」という言葉はありましたが、その具体的な内容は示されていませんでした。これは新設された同条のコメント(後記)にも書かれているように、消防法第8条に集合住宅の防災について規定があるため、重複して「標準規約」に記載する必要がないと判断したと考えられます。しかし、地震や風水害等の危険が大きくなる中で、マンションの区分所有者や居住者にとって身近な「標準規約」にも明記する必要があると判断し、新たに条項を設けたのでしょう。
この条項は居住者が50人以上のマンションに適用されますが、居住者がそれよりも少ない場合でも規約に追加することが望ましいと思います。
また、コメントにあるように「消防法施行令別表第116 項イ」に該当する複合施設がある場合は、居住者が30人以上でも適用されます。自分たちのマンションがこのケースに該当するかどうか判断できない場合は、所轄の消防署にお問い合わせください。
新たに加えられた消防・防災に関係する条項は次のとおりです。
| マンションの居住人数が一定規模以上の場合に規定 (防火管理者) 第32条の2 理事長は、防火上必要な業務を行わせるため、防火管理者を選任し、消防署に届け出なければならない。 2 防火管理者は、管理組合における防火上必要な業務を統括し、他の組合員及び占有者に対し、必要な監督を行うほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。 一 消防計画の作成及び消防署への届出 二 消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施 三 避難経路の確保及び点検 四 消防用設備等の設置状況の確認及び点検 3 防火管理者が、消防署の指導等に基づき施設の改善を申し入れたときは、理事長は、必要な措置を講じなければならない。 |
3⃣また、「標準規約」を補足する「コメント」にも次のように追加されました。
| 【コメント】第32条の2関係 ①消防法(昭和23年法律第186号)第8条の規定により、居住者数が50人(消防法施行令別表第1 16項イに該当する場合は30人)以上ある集合住宅において、建物の管理権原者に防火管理者の選任が義務付けられていることに鑑み、本条の規定を確認的に設けたものである。 ②防火管理者の選任に当たっては、その要件として、消防法施行令第3条において「防火管理業務を適切に遂行することができる管理的、監督的地位にあるもの」であること及び防火管理上必要な知識・技能を有していることが求められる。 ③防火管理上必要な知識・技能を有することについては、消防が実施する防火管理講習の修了者のほか、消防法施行令第3条第1項第1号ロからニまでに掲げる防火管理者として必要な学識経験を有する者がこれに該当する。 |
4⃣さらに、管理組合の業務についても、次のようなコメントを追加、管理組合のほかに防災組織等を設けることも示唆しています。
| 【コメント】第32条十二号関係 ⑨第十二号に掲げる「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」のうち、「防災に関する業務」とは、平時から管理組合や区分所有者において進めるべき防災対策の取組である防災マニュアルの作成・周知、防災訓練の実施、防災情報の収集・周知、防災用名簿の作成、防災物資等の備蓄等が考えられる。なお、これらの取組については、管理組合が担うのではなく、別に防災活動に取り組む組織を結成した上で、その組織が主導して取り組むことも考えられる。 |
5⃣このほか、規約改正で、防災と密接に関係する「区分所有者・居住者名簿」の作成についても、条項を新設しました。
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(組合員名簿等の作成、保管) |
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※マンション標準管理規約(単棟型)新旧対照表
6⃣標準管理指針が示す具体的な対応策
なお、国土交通省は「標準規約」のほかに、具体的な活動内容等を示した「標準管理指針」を平成17(2005)年に作成しています。これは、作成後に改正されていませんが、〈標準的な対応〉と〈望ましい対応〉は、現在でも通じる内容となっています。
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※マンション標準管理指針
マンションサポートちよだmini第182号掲載(2025.10月発行)
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