高騰しているのは、マンション価格だけではありません 建設工事費の上昇も管理組合と家計を直撃します
1⃣日本のマンション価格は、国際的には割安
マンション価格の高騰に関するニュースが、マスコミをにぎわせています。NHKは3月24日に「東京23区で販売された2月の中古マンションの平均価格は、70平方メートルに換算して1億2,300 万円余りとなり、前年同月に比べておよそ35%上昇した」と報じました。
新築マンション価格については、2月25日の日本経済新聞が(株)不動産経済研究所の発表をもとに、「2025年の全国の新築マンションの平均価格は、前年比7.8%高の6,556 万円だった。9年連続で過去最高を更新した。前年よりも上昇幅が拡大しており、建設費の高騰や供給不足を背景に上昇傾向が続いている。首都圏(1都3県)は前年より17.4%高い9,182 万円
となり、初の9,000 万円台となった。特に23区では21.8%高の1億3,613 万円となった」と伝えました。
マンションをはじめとする不動産価格の高騰は、約30年前の1990年代後半にも起きました。「日本を1つ売ればアメリカが4つ買える」など、根拠のない話が飛び交いましたが、実体経済の裏付けのない上昇だったため、日本の社会・経済はバブル崩壊という大きな傷を負うことになりました。その後、日本は「失われた30年」と言われる長い停滞に陥り、現在は世界第2位の経済大国の地位を失い、第4位を維持することも難しい状況にあると言われています。
今回のマンション価格高騰は、この間に生じた世界の主要都市との住宅価格の格差を埋める動きとも言えます。リビン・テクノロジーズ(株)の調べによれば、日本の1LDKに相当する1ベッドルームの購入価格(2024年12月時点)が最も高いのはチューリッヒ(スイス)で、1ドル=153円換算で1億6,000万円を超えます。一方、東京は43位で3,916 万円です。
このような背景から、割安感のあるマンションを購入する外国人が急増しているため、4月から施行された改正区分所有法では国内管理人制度を新設しました。
また、今回の住宅価格の上昇は国際的な市場動向の影響を受けたものです。そのため、無理に住宅価格を引き下げようとすることには弊害もあります。給与水準の引き上げや、いわゆるアフォーダブル住宅など低廉な住宅供給によって対応していくことが重要です。
2⃣消費者物価を上回る建設工事費の上昇
マンション価格ほどマスコミは注目していませんが、建設関連の工事費の上昇も深刻で、消費者物価を上回る勢いで上昇しています。国土交通省が公表している「建設工事費・消費者物価の推移」(図1)によれば、平成27(2015)年度を100とした場合、令和6(2024)年度の消費者物価は110.3であるのに対し、建設工事費は127.6に達しています。
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| 図1:建設工事費・消費者物価の推移消費者物価:「消費者物価指数」(総務省)/建設工事費:「建設工事費デフレーター」(国土交通省)※令和4・5・6年度は暫定値 |
3⃣どうする、修繕積立金と長期修繕計画
この1~2年の建設工事費の上昇は顕著です。このため、マンション管理にもさまざまな影響が及んでいますが、特に深刻なのは、大規模修繕工事とそれに伴う長期修繕計画および修繕積立金への影響です。
国が実施した令和5年度マンション総合調査によれば、「現在の修繕積立金の残高が計画に対して不足している」とするマンションは36.6%に上ります。これは、工事費が比較的安定していた時期のデータであるため、現在の状況で再調査すれば、さらに深刻な結果になることが予想されます。(図2)
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4⃣工事費上昇に負けず、柔軟に長期修繕計画の見直しを
既存マンションの場合、中古価格が上昇していても、売却しなければ実際に収入が得られるわけではありません。現役世代であっても、収入の伸びを大きく上回るペースで上昇する工事費に対応するため、修繕積立金の引き上げに簡単に賛成することは難しいでしょう。なおさら年金生活の世帯には、修繕積立金の値上げは生活に直結する問題です。
管理組合としてまず検討すべきことは、修繕積立金の引き上げを行う前に、修繕積立金をより有利に運用する方法です。例えば、住宅金融支援機構が発行する「マンションすまい・る債」は、今年度から金利が2%に引き上げられています。
次に重要なのは、長期修繕計画の見直しです。工事項目ごとに修繕周期を精査し、延長が可能なものについては工事間隔を見直すことが有効です。さらに、一定期間内に必ず実施すべき工事項目と、劣化や不具合が顕在化してから対応可能な工事項目を区別することも重要です。後者については予備費を多く確保し、必要が生じた時点で対応する方法も考えられます。
工事費の上昇に対応するためには、柔軟な発想で長期修繕計画を見直し、実施可能な工事項目から着実に進めていくことが求められます。
そして何より重要なのは、日頃から建物や設備の適切な使用を心がけ、劣化の進行を少しでも遅らせることです。そのためには、すべての区分所有者および居住者の意識向上が不可欠です。
マンションサポートちよだmini第188号掲載(2026.4月発行)
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