直近の熊本地震に学ぶ -今、私たちのマンションでできる備え
2026年7月28日午後4時27分ごろ、熊本県を震源とする大規模な地震が発生しました。震源の深さは16km、地震の規模を示すマグニチュードは7.1、最大震度7を観測しています。この地震により、大型ショッピングモールでの爆発事故や工場での倒壊事案など、甚大な二次被害が相次いで発生しています。また、広範囲にわたる電気・水道などのライフラインの寸断も報告されており、現在も影響が続いています。
2016年4月に発生した熊本地震では、最大震度7の激震により、熊本城などの歴史的建造物や多くの住宅が甚大な被害を受けました。マンションも例外ではなく、県内では約600棟が被災しています。具体的には、高経年マンションのピロティ部分が座屈(※)したほか、住戸内では電気温水器が転倒して漏水事故が発生するなど、構造・設備の両面で深刻な爪痕を残しました。
(※)座屈とは柱や壁などが重みや衝撃で折れ曲がる現象
今回の地震により、熊本県内では多くのマンションが被害を受けました。
熊本市中央区にある14階建てのマンションでは、共用部分の壁面にひび割れが生じたほか、一部の部屋でドアが歪んで開きにくくなるなどの被害が確認されています。また、3基のエレベーターがすべて停止したままで、住民は階段での昇降を強いられています。
別の14階建てのマンションでもエレベーターが一時停止したほか、立体駐車場が故障する被害が発生しました。車を動かせなくなったことで「買い出しを最小限に抑えざるを得ない」「壊れた家電を修理に出せない」など、住民の日常生活に深刻な影響が出ています。こうした事例を教訓として、マンションでの地震防災のポイントや講じられている対策を改めて確認しましょう。
▮千代田区のマンションで取り組むべき地震対策
大規模地震の発生により、千代田区内のマンションや高層ビル等でもエレベーターの長期停止が予想されます。都内エレベーター保守会社の被災に伴い、早期の点検・復旧は困難であり、立体駐車場をはじめとする各種設備の損壊による生活への影響も懸念されます。
千代田区全域は、大規模延焼火災の危険性が低い「地区内残留地区」であり、広域避難は原則不要とされています。発災時は安全な建物内での避難(在宅避難)が前提となるため、平時から「強固な在宅避難環境」を構築することが重要です。
各住戸でできること
○1週間分の備蓄
発災時に速やかな在宅避難を実践するため、各住戸で1週間分を基準とした人数分の備蓄(飲料水、レトルト食品、カセットコンロ、ポータブル電源等)を推奨します。特に発災後のマンションでは、配管損傷の恐れから、トイレの使用は原則禁止となるため、凝固剤付き携帯トイレの備えは不可欠です。
なお、必要となる備蓄品は家族構成や住環境により異なります。東京都が提供する「東京備蓄ナビ」を利用すれば、世帯状況に応じた推奨品リストが確認できるため、これらを参考に各住戸での備蓄拡充を図ってください。
○家具や家電の転倒・落下対策
高層建築物は「長周期地震動」特有の性質により、上層階ほど揺れが増幅する傾向にあります。室内での負傷を防ぐため、家具類の固定措置(壁面芯材へのネジ留め、または突っ張り器具等の併用)を徹底してください。特に就寝位置周辺の大型家具の配置には細心の注意が必要です。
また、避難導線となる玄関や廊下を確保するため、家具のレイアウトを事前に検証・見直すことも有効な対策となります。
なお、発災後はガラス等の破片が床面に散乱し、歩行困難となる事例が多いため、枕元へのフットウェア(スニーカー等)の常備を推奨します。
管理組合でできること
○エレベーター非常用備蓄キャビネットの設置
エレベーターの緊急停止時、カゴ内に人が閉じ込められるリスクがあります。万が一に備えて、まちみらい千代田が配付している「エレベーター非常用備蓄キャビネット」を設置することが安心につながります。キャビネットの中には、救助を待つ
間に必要な物資(飲料水、携帯トイレ、トイレットペーパー、懐中電灯等)が備えられています。皆さんのマンションにもこのキャビネットの設置を推奨します。
○要支援者の安否確認
インフラ途絶時の在宅避難では、災害時要援護者(高齢者や障がい者など)に対する住民相互の共助体制の構築が不可欠です。管理組合では、速やかな安否確認と救助活動を可能にする「要支援者名簿」を整備するとともに、個人情報保護法に準拠した厳格な管理・運用規定(閲覧制限や保管方法等)を策定・周知してください。
地震の発生自体を回避することは不可能です。しかし、平時の「備え」を徹底することで、減災(被害の最小化)を達成することは十分に可能です。本稿を契機として、各世帯や管理組合での防災体制の点検と強化を強く推奨します。