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千代田区の水害リスクと、 私たちができる豪雨への備え

マンション管理士 飯田太郎

 2026年8月13日夕方から翌14日未明にかけ、千葉県では線状降水帯が相次いで発生し、広域で深刻な浸水被害が発生しました。気象庁が「令和8年8月千葉豪雨」と命名したこの災害は、死者13名、浸水家屋2,000棟以上という甚大な爪痕を残しています。発災から1か月が経過した現在も、被災地では生活や経済、交通網の混乱といった多角的な二次被害が続いています。
 9月7日から8日にかけても、秋雨前線の活性化により関東地方が再び記録的な大雨に見舞われ、被災地にさらなる深刻な追い打ちをかけました。
 千代田区でも大雨への警戒を呼びかける事態となりましたが、もし同様の大規模豪雨が東京都心を直撃した場合、一体どのような事態が起こり得るのかを考えます。

▮地形に高低差のある千代田区

 建物や道路が密集し、山や河川が少ない千代田区は、一見すると水害とは無縁の地域に思えるかもしれません。
 しかし、警戒するべきは河川の氾濫(外水氾濫)だけではありません。先日の千葉豪雨では、排水が追いつかずに下水道などがあふれる「内水氾濫」が「外水氾濫」と複合的に発生し、甚大な被害をもたらしました。このように都市部であっても短時間の猛烈な大雨によって「内水氾濫」が発生する可能性は十分にあります。
 特に千代田区は坂の多い地形で、傾斜を流れた雨水が低地へ集中しやすい特徴があります。ひとたび大規模な冠水が発生すれば、地下の出入り口や施設、駐車場などへ大量の雨水等が流れ込む恐れがあり、細心の注意が必要です。

▮マンションでも注意が必要

 マンションは「高層の建物だから大丈夫」と考えがちですが、決して油断はできません。先日の千葉豪雨では、千葉市内の約10棟のマンションで地下の電気設備が浸水し、大規模な停電が発生しました。それに伴い給水設備も停止したため、1週間以上の断水や復旧までに1か月以上を要する見通しのマンションがあり、影響が長期化しています。
 このように、マンションで警戒すべきことは、地下の駐車場や機械室、電気設備が水没することによる「建物全体の機能停止」です。エレベーターの停止や停電・断水が発生すると、復旧までに相当な時間を要します。「自室が浸水するかどうか」という視点だけでなく「共有設備が使用不可となったときはどうなるか」ということまで想定した備えが極めて重要です。

▮交通機関がまひするおそれ

 千葉豪雨では電車の運転見合わせが相次ぎ、1万人を超える帰宅困難者が発生しました。特にJR 蘇我駅周辺では道路の冠水も重なり、1日以上も足止めされ、駅構内や電車内で一夜を明かす乗客の姿も見られました。
 多くの行政機関やオフィス、学校が集中する平日の昼間や夕方に大規模な大雨に見舞われた場合、さらに深刻な状況が予想されます。鉄道の運休や道路の通行規制によって、千代田区内に多くの人々が取り残される恐れがあります。「雨が弱くなったから帰ろう」と急いで移動すると、駅の極端な混雑や道路の冠水に巻き込まれ、より危険が高まる可能性があります。大規模な豪雨の直後は無理に移動せず、安全な場所に留まって状況を見極める冷静な判断が求められます。

▮事前の備えが大切

 マンションでは、設備停止や断水に備えて下記の対策を進めてください。

ハザードマップの確認
 千代田区が公開しているハザードマップ(神田川・荒川氾濫や土砂災害などを想定)や、ケースごとに設定されている避難所の情報などをあらかじめ確認しておきましょう。

ハザードマップ(洪水・高潮・土砂災害)
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/bosai/bosai-taisaku/fusui-dosha-saigai/map.html

1週間分の生活用品の備蓄
 停電や断水時はエレベーターが停止するため、上層階から階段で何度も往復するのは困難です。自室に1週間程度留まることになっても困らないように、飲料水やインスタント食品に加え、「簡易トイレ」を必ず備えてください。

部屋の階数に応じた適切な行動

▶ 低層階(1,2階)に居住の場合
 エントランスや1階が浸水している状況での屋外避難は命に危険を及ぼします。屋外避難を控えて、マンション内の上層階通路や共有スペースなど安全な高所へ垂直避難を行ってください。
 また、下水道から屋内への逆流被害を防ぐため、ビニール袋に水をためた「水のう」を作って、各戸の排水口や便器に設置してください。

▶ 高層階(3階以上)に居住の場合
 室内への浸水リスクは低いため、自室内にとどまる在宅避難が基本となります。
 ベランダの排水口にゴミや落ち葉が蓄積していると、降雨時に排水機能が低下し、たまった雨水が窓のサッシから室内に浸水するリスクが生じます。事前に排水口周辺の清掃を行ってください。

 予測が難しい水害だからこそ、事前のリスク把握と準備が被害を最小限に抑える鍵となります。改めて、お住まいのマンションやご自宅の備えを見直してみましょう。


 マンションサポートちよだmini第193号(2026.9月発行)